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起業家の4類型:特に社会起業家の視点で。

最近、仕事人としてはけっこうなスランプに陥っていました。 というのも「対人援助の本質」に触れる機会があり、私自身の価値観が大きく揺さぶられた時期だったのです。

対人援助の世界では新参者である私が、素晴らしい対人援助のあり方に触れ、「こころの治療」とはこういうものなのだと、今まで持っていた認識を大きく変える(広げる)ことになりました。

もともと、cotreeは私自身が精神科医療を受診した際の経験をもとに「こころのケアってもっと普通に、医療外で、多くの人に届かなければいけない。」という問題意識を持ち「そのためにはインターネットも活用し、もっと効果的で効率的なあり方を探りたい」という思いを抱いたことが原点です。

けれど、効率性を求めるために犠牲にせざるをえないものの重要性みたいなものを知れば知るほどに、葛藤は大きくなっていくわけです。 その葛藤を言語化したのが前回のブログです。がっつり葛藤していますね。

私の場合は、課題解決のために「良き(正しい、効率的な、効果的な)サービスをつくりたい」という思いがあったので、知らなかった真実を知れば知るほど「良さ(正しさ)」が移り変わってしまうジレンマを抱えていました。自分の視点が広がり、価値観が変化すると「このサービスはこのやり方で良いんだろうか?」と悩んだりします。

こういうことを考え始めると、まぁ日常の仕事は進みません。

ソーシャルベンチャーあるある①:会社=社長の創業期

ベンチャー創業期、サービスが小さな時期は、会社=サービス=社長であることが多いように思います。会社やサービスに社長の価値観や個性が大きく反映されるし、コンセプトをつくるのもサービスを売りにいくのも社長です。いつしか会社のアイデンティティ=社長のアイデンティティになってしまうのかもしれません。

特に社会起業家の場合は、社長が抱えた問題意識をきっかけに、社会問題を解決するのだ!という強い意志を持ってサービスを立ち上げていることが多く、会社そのものが社長のライフワークになっていくのですよね。

でもそうすると、事業が進む中で自分の価値観が揺らいだときや、もともと設定していた「問題」の見え方が変わっていったときに、会社そのものの方向性が揺らいでしまうことになります。

ソーシャルベンチャーあるある②:問題を解決したい!の罠

また、問題解決型のソーシャルベンチャーは、「問題」ばかりを見て、取りうる選択肢が狭まって八方塞がりになってしまう、ということも起こります。

「問題」というのは明確な実態を持たないことが多く、定義付けによっていかようにも変化し、解決しても解決しても形を変えて出てくることが多いのです。

私が今までにお会いした先輩NPOやソーシャルベンチャーの経営者にも「当初サービスを始めたときに見えていた課題が当初思っていた全体像と異なっていた」ということをきっかけに、停滞したことがあると語っておられた方が何人もいます。ある人はサービスの方向修正を行い、ある人は葛藤を抱えたままサービスを運営しておられました。 

事業運営の中でのふたつの軸

どちらが良いということはないのですが、上記のあるあるは、起業をするうえで持つべきふたつの軸のヒントになるように思います。

自己のニーズー他者のニーズの軸

ひとつは、会社=社長を切り離すのか、切り離さないのか。 もっと言えば、ソーシャルビジネスの場合は「自分がやりたいこと=会社がやること」、営利企業の場合は「自分の利害=会社の利害」にしておくのかどうか。

自分の価値観に沿って会社を運営するという選択をして、会社=社長を維持するのであれば、自分がやりたいことをやりたい方法でやり続けられます。一方で、個人レベルの変化に対応する柔軟性を保つために小さな組織であらざるを得ない、という壁にぶつかります。

それに対し、会社と社長を切り離し、他者視点にシフトすることで、自分の変化に揺さぶられない、より安定した、大きな組織を目指すことができます。

現在の問題ー実現したい未来の軸

もうひとつは、「今ここにある問題」に視点を持つのか、「実現すべき未来」からの視点を持つのか。

「問題を解決しよう」と思うと、目の前の乗り越えなくてもいい壁に気を取られて、実現したい未来への近道が見えなくなってしまうことが多いようです。もしかしたら、実現したい未来が実現しない理由は、その問題の存在が理由ではないのかもしれない、という可能性に鈍感になります。方法論に囚われてしまうことも多い。

一方、未来からの視点で見ることで、同じ未来を 実現するための、複数の道筋が見えてきます。

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特に「自分の」「問題意識」を起点とする社会起業家の場合、この2軸の壁に、遅かれ早かれぶつかるケースは多いのではないかと思います。

このときが、「自分が」どんな「問題を解決したい」のか?ではなく、どんな「未来を実現する」のが「必要とされている」のか?という観点から役割を再構成する時期なのかもしれません。

視点の2つの軸と起業家の4類型

このことについて考えていたら、なんかいい感じでグラフができました。

これによると、起業家のタイプは4種類に分けられます。

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① 自己愛型起業家(自分の欲求x現在の課題)

今自分が持っている問題意識を、自分のやりたい方法で解決したいタイプ。個人的な劣等感や満たされない感が原動力になる「もっと認められたい」「今の仕事が苦しい」だけでなく「この社会的問題を『自分が』解決したい」というのも含まれます。問題が社会的問題解決の体裁をとっているときにはわかりにくいのですが、NPOとかソーシャルベンチャーは結構な確率でこの領域でとどまっているのかもしれないと感じます。自己満足の領域。

自己実現型起業家(自分の欲求x実現すべき未来)

自分がもっと成長したり、裕福になったり、なりたい自分のイメージに近づくためにがんばるタイプ。営利企業には多いパターン。

③ 課題解決型起業家(社会の必要性x現在の課題)

社会が抱えている課題を解決する必要があるから、その課題のために「自分がどうしたいか」を切り離してがんばるタイプ。良きNPOやソーシャルベンチャーに多いパターン。

④ 未来実現型起業家(社会の必要性x実現すべき未来)

他者視点のニーズを基礎にして、未来視点で行動を決定する。社会的に大きなことを成し遂げるのは、営利も社会派もこの領域のひとたちです。多分。

ちなみに、大切なことは、他者視点と自己視点は必ずしも対立するものではなく、他者視点を持っているうちに、それが内在化されて自己視点になっていくことが多い、ということです。つまり、結果的には他者視点と自己視点が一致してくる。逆に、自己視点に囚われているうちは、なかなか他者視点になっていかないんだと思う。

同様に、実現したい未来を目指しているうちに、問題は重要性を失っていく、ということも起こります。…多分。

 

こんな感じで考えていくと、私が抱いていた、良き(正しい)サービスをつくりたい、というのは利他的な意図のように見えて、実は自己視点だったということに気づきます。自分が力になりたい人たちに、希望を生み出せるサービスをつくる。とてもシンプルなことですが、日々の業務の中で忘れないようにしたいことです。

 

ちなみに本質的なことを考えはじめると仕事は進まなくなります。

さて。仕事しよう。