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カウンセリングは、基本は対面で。

カウンセリング

と心から思います。

オンラインカウンセリングサービスを運営する身でありながら身も蓋もなくてあれですが、もうこれは全力で主張したい。カウンセリングを受けたいと思うなら、信頼できる専門家と、対面でじっくりと課題と向き合って、無二の信頼関係の中で少しずつ癒しと変化を得ていくのが何よりも素晴らしい、人生を豊かにする体験になると思います。

ここは、私自身もサービスを運営しながらものすごく葛藤を抱えるところでもあります。

私なぞが語るのは憚られるほどに、本来の内省的な心理療法は奥深いものであり、人間同士の「いまここ」での彩り豊かなこころのふれあいであり、効率や方法論を超えたものであると考えています。

「カウンセリングは、基本は対面で」と全力で主張したうえで、今の日本のカウンセリング業界の現実を見ます。

①良き専門家の不足

心理療法を本来の豊かなやり方で提供できる専門家が多く育っておらず、上述のレベルの心理療法ができる心理療法家の数が非常に限られている。その理由としては、市場規模の小ささを背景にした適切・十分なトレーニングの不足、教育制度上の問題、資格制度上の問題が挙げられます。結果として、本当に良き心理療法家にアクセスできる人は絶対数として少ないのです。

②経済的なハードルの高さ

良き心理療法の価格が非常に高い。理由としては、カウンセリングルームの稼働率の低さや保険制度上の課題が挙げられます。

③判断基準と情報の不足

良き心理療法とそうでないものとの判断基準や情報の不在。理由としては、心理療法は密室で行われるために評価が顕在化しづらいこと、明確な評価基準が存在しないこと、心理療法自体が多様な世界観に基づいていること。結果としてせっかくカウンセリングを探しても「いまいちなカウンセラー」に出会ってしまう確率も非常に高い。

要は、今の日本で良きカウンセラーに対面で出会うことがいかに大変か、ということです。

 そして、仮に全員が良きカウンセラーや精神科医に対面で出会えるくらいに供給と情報が十分であったとしても、本当にカウンセリングを必要としている人は、エネルギーレベルが落ちていたり忙しかったりして、対面のカウンセリングを気軽に使えるような状況にないことが多いわけです。(ブログを始めたときにも詳しく書いたことです。)

だから、その供給側の制約、需要側のニーズを満たす存在として、オンラインカウンセリングが担うことができる役割がある、というのが我々の考えです。

オンラインカウンセリングとか怪しいけど、エビデンスあるの?

上述のような課題を克服するためにじゃぁインターネット活用してオンラインでやるとする。でもそれって、エビデンスあるの?というのが問題になります。カウンセラーは言語情報だけでなく五感(六感すら)をつかって利用者のことを感じ取っているのであって、インターネット上で、言葉だけでできることは限られてるでしょ、というのはおそらく臨床に携わるカウンセラーであれば突っ込みたくなるところだと思います。

でも。

エビデンスは、あります。(言いたかった)

私の個人的な見解が入らないよう、こちらの書籍からの引用です。

エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究―クライアントにとって何が最も役に立つのか 

 非言語的なコミュニケーションが治療同盟を形成し強化することにおいて最も重要な要因の1つであると認められている(Bedi et al., 2005)ことを前提とするならば、対面式でないセラピー的介入は、実効性においてきわめて限定的であろうと推察される。しかし、近年電話やインターネットを使ったセラピーへの関心が高まっているのは、こういったコミュニケーション方式が、いくつかの明確な利点を持つことが認識されつつあることにもよる。その明確な利点とは、例えば遠隔地に住んでいたり、移動に関わる問題があったり、セラピー的サービスのコストを低減したり、さらにより迅速な援助を提供しうることなどである(Leach and Christensen, 2006)。加えて、研究は多くのクライアントが電話やインターネットによるセラピー形態にとても満足していることを示唆しており、対面式のアプローチと比較して治療同盟を豊かに形成できないということを示すような明確なエビデンスもない(例えば、Barak et al., 2008)事実、人はコンピュータを介したコミュニケーションにより、個人的な情報を実際に開示しやすくなることを示すエビデンスもある(Mallen, 2003)
 実効性という観点からみると、増え続けている多くの研究は、主に非対面式のやりとりに基づくセラピープログラムは高い有効性を示すことができ、対面式治療と大差ない結果をあげていることを示している(例えば、Barak et al., 2008; Leach and Christensen, 2006 )(中略)研究は、多くのクライエントが電話やインターネットによるセラピー形態にとても満足していることを示唆している。

 ウェブを活用したセラピープログラム(最小限のセラピー的コンタクトを含むものもあれば、含まないものもある)も広範な心理的問題に有効であることを示しており、とりわけパニック障害と不安障害に大きな効果量を示していた(Barak et al., 2008)。(中略)効果量は対面セラピーを受けたクライエントにわずかに劣るものの、全体的に大きな違いはなく、双方のアプローチとも満足度はほぼ同水準にあった。

 (中略)対面式のアプローチと比較して治療同盟を豊かに形成できないことを示唆する明確なエビデンスはない(Barak et al.,2008)。増え続けている多くの研究は、非対面様式のセラピープログラムは高い有効性をもたらすことができ、対面式治療と大差ない結果をあげていることを示している(Barak et al.,2008; Leach and Christensen,2006)。

オンラインカウンセリングの効果を示すエビデンスは、探すとほかにもいっぱいあります。

本当のことを言えば私は、対面の良き心理療法が提供することができるものは、エビデンスで示しえないことのほうが多いと思っています。良き心理療法がもたらすものは、恐らく抑うつ度指数の数値上の変化では計れないものです。数字では計れないけれど、人生をはるかに豊かにするものであるように思います。

それでも今の世の中、エビデンスという「共通言語」で示し得るものはとても大切です。カウンセリングは対人援助である以上、相対する相談者が大切にしている価値観に沿ったサービスを提供しようとするならば、効率性や、目に見える効果や、経済合理性といった価値観や世界観に沿ったカウンセリングのあり方を模索する、ということもひとつの価値の産みだし方であるとも思うのです。

くどい?

いやもうわかった、オンラインカウンセリングがいいし必要なのはわかったよくどいよ、しかも葛藤っぷりが前面に出てて対面がいいのかオンラインがいいのかわかりづらいよ、というリスナーもいるかもしれません(いないか)。

でも、なぜこの記事をあえてまわりくどく書いたかというと、神田橋條治先生の「治療のこころ」シリーズを読み直して、これはもう、心理療法に「効率」とか「方法論」とか「パターン」みたいな考え方を持ち込むこと自体が愚かであるような、本当にすいませんでしたと叫びながら顔を覆って逃げ出したくなるようなそんな気持ちになって、オンラインでは実現できない「治療のこころ」的な世界観を現実にする心理療法にもっとアクセスできる世の中になったらいいのに、と心から願う一方で、そことは少し違う世界観を持つ「オンラインカウンセリング」の存在意義について、改めて整理したい、と感じたからです。

そして改めて、

・オンラインカウンセリングは、効率性とか、経済合理性とか、目に見える治療成果を大事にするという価値観・世界観の中で極めて意義のある方法論であること。

・cotreeが目指しているのは、そのオンラインカウンセリングの可能性を最大化するための最適化された方法を全力で探っていくことであること。

・対面のカウンセリングにしか実現できない価値が(たくさん)あること。でも、オンラインでしか実現できない価値も(たくさん)あること。

・オンラインか対面かは、あまり本質的な議論ではなくて、それぞれの可能性と限界を把握したうえで、適切な方法で使うことのほうが大切であること。

という認識のもと、より多くのユーザーに対して、ユーザーが大切にしている価値を届けるべく、粛々とサービス改善を続けていきたいという決意を新たにするとともに、より多くの専門家の理解を頂けたら良いなぁ、と考えています。

※といったような考えごとをしていた結果とは言いませんが、今日滞在時間18時間で弾丸で実家の広島に帰って久しぶりに走ったハーフマラソンは、13.8キロ1時間35分のカットオフに2分ほど間に合わず、ドナドナされました。やる気出してがんばっても紙一重でカットオフにあってしまうこともあるわけですが、それも味わい。めげずにがんばります。

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